Takaorthology

2010年11月10日 水曜日

Coffee Break:今月読んだ本; 渡り鳥、数学、E=MC² など


●わたり鳥の旅 [大型本] 偕成社 (2010/3/3)
樋口広芳 (著), 重原美智子 (イラスト) 

コハクチョウ、マナヅル、ハチクマの旅が彼らの視線から見たイラスト入りで詳細に解説されており、絵に感動しました。見たことも行ったこともない、豊かな北の繁殖地への想像を膨らましてくれます。
コハクチョウは自分でも2005年の2月に琵琶湖で羽根を休めている彼らの写真を撮ったことがあるので、よけいに親近感をもつことができました。
コハクチョウ http://takaortho.exblog.jp/842388




●数学で読み解くあなたの一日 ジェイソン・I・ブラウン、Jason I. Brown、 田淵 健太 (単行本 - 2010/9/22)

この本はちょっと期待はずれでした。センスオブワンダーが全然なく、半分読んで時間の無駄と思い、残りはまたいつかモードです。


●E=mc2――世界一有名な方程式の「伝記」 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) [文庫]

これはものすごくおもしろかったのですが、13章の「午前8時16分、広島」で少し息がきれてしまっているのが残念。チャンドラセカールのあたりははしょりすぎており、ブラックホールとのつながりに期待する読者には物足りないと思います。

ただ、13章前後の核開発関連の部分は出色の出来だと思います。以下、要約と自分なりのメモを下記に。

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B29から投下された爆弾は43秒にわたって落ちていった。43秒は地上600m の高さに来た運命の時である。爆弾は長さ3mで、直径70cm。弱い信号が発せられ、地上までの距離が逐次計算される。その反射信号を最後に受け取ったのが高度600mの時だった。

余談だが、この計算をしたのは、かのジョン・フォン・ノイマンで、彼は文化的意義が高いことから京都を投下地点にすべしと最後まで主張した一人である。600mというのは彼曰く、理想的な高さだったらしい (◕︵◕)

このあとのことは一瞬で起こる。最初に3mの筒の中で砲弾が発射される。その弾がウラン235。1m進んだところで、同じウラン235の塊に衝突する。それは数10kgほどのものだが、ウラン235がそれだけ集積された場所はほかに地球上のどこにもない。衝撃により多数の中性子が遊離する。これは自然界では普通起こることではない。

原子核には正の電気を帯びた陽子がひしめいているので、普通は外部からの粒子の侵入が阻止される。しかし、先ほどの中性子は電気を帯びていないので、この陽子に邪魔されることはなく、原子核のなかに割り込み、45臆年以上びくともしなかった平衡を失わせる。この強い核力の束縛が断ち切られるほどぐらつくと、すぐに陽子が静電気力により分離する。ウランの密度が非常に高いので、とうとう連鎖反応が始まる。ウランの原子核の高速で飛ぶ破片は、二個からすぐに四個となり、8個、16個と増えていく。原子の中で質量が消滅していき、原子核の破片が動き回るエネルギーとして出現する。こうやって E=mc² が発動された。

このエネルギーの倍々の放出ゲームはわずか数百万分の一秒で起こる。なので、爆弾はまだ、ほぼ地上600mのところにある。分裂の連鎖反応はおよそ80世代を経て終わる。最後の何回かの倍加はすさまじいものがある。例えば庭の池に睡蓮が浮かんでいて、1日ごとに葉のしめる面積が倍になるものと仮定しよう。80日目には葉が池を完全に覆うとする。池の半分がまだ覆われておらず、陽光にあたり、外気に触れているのは、いったん何日目だろうか。それは79日目のことだ。E=mc² の反応がすべて終わると、核分裂で生じた運動エネルギーは、爆弾の内部で、恐ろしい熱エネルギーに変わっていく。

たった43秒前は高度1万メートルの冷気のなかにいたのが、いまや病院のうえ600mに降下し、気温が27°に上がったため爆弾表面は結露している。そして一瞬のうちに、体温と同じ37°から水が沸騰する100度を超え、鉛が気体になる1744°に至る。そして連鎖反応が進むにつれ、さらにいっそうのウラン原子が分裂して、その温度は太陽表面と同じ数百万度に達するばかりか、さらに上昇は加速する。空に浮かんだ爆弾の中心は、宇宙が誕生した瞬間と同じ状態になる(厳密には同じではない。それは核融合は起きていないからだ。大気は熱核融合を起こしてはいない。きわめて大量の熱が発生するといっても、核融合がはじまるまでの障壁を乗り越えるにはまだ不足している。核融合が起こったのではという広く流布された噂は1958年に作家のパール・バックが原爆開発の責任者の一人に行ったインタビューでの誤解にもとづいている)。


いまや強烈な閃光がきらめき、まるで空が裂けたかのようになる。その閃光は月の軌道に達し、一部は地球に跳ね返ってきたものの、残りの多くは前進をつづけ、はるばると太陽へ、そして無限の彼方へと飛んでいった。その輝きは木星からも容易に見えたはずだ。そして地上では恐ろしいことが起きた。当時、アメリカでは原爆による攻撃は不要という雰囲気はかなり支配的だったが、ハリー・S・トルーマン大統領にもっとも影響力のあったジミー・バーンズ国務長官は温厚な性格を著しく欠いた人物だったようだ。ちなみに1945年5月31日の大統領「暫定」委員会の記録はこうなっている。


「つぎのようにバーンズ委員が提案し、委員会で承認された。......爆弾は日本に対して可能なかぎり早期に使うべきである。労働者の住居に囲まれた軍需工場を狙うべきである。事前に警告することなく攻撃するべきである。」

この世の物とは思えないその物体は、あらんかぎりの火力で約0.5秒にわたって燃えた。東京スカイツリーの予定高さが634mなので、その展望台あたりに、空に占める大きさが太陽の数百倍になった数百万度の高温物体が誕生した。直下周辺の生物は、皆、人間も、犬も猫も、皮膚がごっそり体から落ちるか、垂れ下がった
(ここで深く政治的な話しをするつもりはないんだけど、ちょっとだけ。私は日本も憲法改正して自衛の軍隊をもつべきであると強く思うが、核兵器を自前で持つのに抵抗があるのはここにある。そして、アメリカ人には個人的恨みもなく、アメリカの音楽も映画も、海外ドラマも好きだが、ジミー・バーンズとトルーマンは大嫌いで、それ故か心情的に民主党は好きになれない(日本の民主党は論外)。オバマが核軍縮を目指すというなら、アメリカは国家として、原爆を使用したことを、あの下にいた10万人を超える人々、長崎の人に、そして人類に「Sorry」と謝罪すべきだろう。話しはそこからである。賠償はいい。そして「過ちは繰り返しませんから」の主語はその当時のアメリカという国家だという認識を皆がもつことが必要だと思う。それについては日本国内ですら認識に隔たりがあるのが情けないことであるが)。

そして、この異様な物体の熱により、空気が押されるのだが、そのスピードは太古の昔に巨大な隕石か彗星が落ちたときに匹敵する。いかなる台風、ハリケーンがもたらす暴風よりもさらに数倍は速い。じつのところ、あまりに速くて音がしないのだ。爆風が強大な力で何か音を発生させても、音速より速いので、音を追い抜いてしまうからだ。それが終わると、大気は押しのけられた隙間を埋めるために急いで後戻りする。その結果、気圧が一時的にほとんどゼロまで下がる。爆発地点から十分に離れていて助かった生き物も、わずかの間、大気圏外の真空にさらされたようになり、身体が破裂してしまった。

こうして、巨大なきのこ雲があらわれたとき、アインシュタインの方程式は、地球という惑星において最初のはなはだしく不名誉な大仕事を終えたのだった。
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以上、ご一読たいへんありがとうございました。


投稿者 高尾 祝文 | コメント(0) | トラックバック(0)

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